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アカデミア研究者が、企業側へキャリアシフトする際の心構え(大谷 晃太郎)

RGFエグゼクティブサーチ ジャパン

大谷 晃太郎

はじめに

Ph.D取得後、高い志を持って国内や海外の大学・研究機関でポスドクとして働いていた研究者たちが、年齢を重ねるにつれ結婚し家族を持つほか、親の介護サポートが必要になるなどの環境変化を経験し、研究者としての限界を感じたり将来を見据えた雇用安定などを色々と考えるようになり、アカデミア研究の世界から企業側へのキャリアシフトを転職エージェントへ相談頂くケースが良くあります。


今回は、アカデミアで研究に携わってこられた方々が企業側への就活を視野に入れた場合、転職エージェントの立場から(1)海外で企業へ就職する道、(2)日本国内で企業へ就職する道、(3)転職エージェントの上手な活用方法について、基本的なポイントを整理したいと思います。


なお本投稿は、日本国内においてヘルスケア・ライフサイエンス業界を担当する転職エージェントとしての個人の経験に基づくものであり、所属企業としての見解を述べるものではございません。


(1)海外で企業へ就職する道


海外の現地企業(今回は欧米やオーストラリアを対象として)就職を考えた場合、Indeed.comやMonster.comなど、求人情報サイトを活用することもできますが、日本にいながら仕事が見つけられるほど海外への転職・就活は容易ではありません。まずは、海外でポスドクとして在籍する中で研究者の人脈ネットワークを活かして求人情報を集めたり、現地の転職エージェントへ登録したり、自ら求人案件を探し積極的に現地企業へ応募することになります。そんな中、アカデミアで働く日本人研究者の皆さんが見落としがちなのは、企業側の立場・採用目線で考え、自己アピールすることです。


・Curricular Vitae(英文レジュメ)作成


ポイントは、面接官の目線から、レジュメの体裁を含めこれまでの研究者としての経歴を見やすく、分かりやすく具体的に、実績を端的にアピールできているかどうか。採用選考のファーストステップは書類選考です。大半の日本人のCVは、海外の候補者と比較して英語による文章表現に乏しいだけでなく、経歴内容もjob descriptionの写しのままだったり、見た目の体裁(フォント、サイズetc.)もプロフェッショナルレベルに満たないケースが多いです。ネット上で様々なレジュメサンプルを参考にできますし、最低限ネイティブの友人にレビュー・校正をお願いするべきです。


・英語でのコミュニケーション能力


英文レジュメ作成だけでなく、英語でのコミュニケーションにおいて、互いにストレス無く、仕事に支障が無いレベルかどうか。英語ネイティブである必要はありませんが、海外で働く場合、英語コミュニケーションは出来て当たり前です。面接の場で、質問に対する回答が抽象的で具体性に乏しい、回答が表面的で薄っぺらい、回答が質問に対して的を射ていない、ロジカルに分かりやすくまとめられない等、英語での意思疎通が懸念される人材は必要とされません。企業研究を怠らず、事前にしっかりとした面接対策の準備が必要です。


・就労ビザをサポートする価値ある人材


海外各国において面接官は、現地ローカル人材の雇用が優先される中、現地候補者や他の外国人候補者と比較し、職務を遂行できる能力・スキルに加えて付加価値のある優秀な人材かどうか、そして就労ビザをサポートしてまで採用すべきかどうかを見ています。職務内容や企業が求める人材スペックを理解した上で、想定される候補者と横並びにしたとき、自身のスキルや経験など貢献できる価値が他の候補者に対し、いかに勝っているかを明確に言語化し、英文レジュメを作成し、面接の場においてアピール出来なければなりません。


・日本人であることを強みとして


一方で、日本人であることを強みとして逆手にとり、日系企業の海外拠点での駐在員採用や現地採用を狙うということも可能性としてゼロではありませんが、あまり期待できません。駐在員採用枠は現地でのビジネスマネジメントを期待されているため、企業での就労経験の無い研究者をあえて駐在員待遇で採用することは理にかなっておらず、基本的にありえません。一方で、現地採用ということであれば、上記同様に会社員経験の無い日本人アカデミア研究者を就労ビザをサポートしてまで採用すべき理由があれば、内定を獲得できるかもしれません。ただ、せっかく見つけた求人企業は、もしかすると現地採用が上手く出来ておらず、例えば勤務地が田舎で辺鄙、年収待遇が見劣る、職場環境や企業文化・体質に問題があるetc.、何かネガティブな訳ありかもしれないというリスクもあるので、事前に企業に対するレビュー・評判をGlassdoor.comなどのサイトで調べておくことも大事です。


(2)日本国内において企業へ就職する道


アカデミアで研究に従事されてこられた方々が、初めて企業側で働くことを念頭に、転職エージェントとの面談の場で「企業側で、どんな仕事をやりたいですか?」と質問されると、多くの方がとりあえず企業側でも研究職を希望されます。「どんな研究がしたいですか?」と掘り下げて聞けば「アカデミアで研究してきたことを活かしたい」「製品の研究開発に携わりたい」など、漠然と「研究することが好きだから」というスタンスの方々がとても多いです。学生の延長ではなく、中途採用の即戦力人材の対象として、自分の経験やスキルがどのように企業に活かせるのかという雇用側の視点でレジュメを作成し、面接に臨む必要があります。


・研究職を狙う場合


もし研究職を狙うのであれば、ご自身の基礎研究テーマや成果と応募先企業の先端研究ニーズに合っていれば、可能性は見えてきます。例えば製薬業界においては、従来までの低分子化合物ではなく、ペプチドや核酸、iPS細胞・再生医療というニューモダリティでの創薬研究や、がん治療に関連する遺伝子変異・バイオマーカー研究など、最先端の研究・技術開発に取り組んでこられた知識・経験があり且つ筆頭著者としての論文実績をお持ちである方であれば、年齢的に30代半ばでも可能性はあります。


ただ一般的に転職エージェントは、そもそもアカデミアでの研究内容を正確に理解できるほどのサイエンスの知識を持ち合わせておらず、研究者案件は苦手意識があり億劫になりがちです。そのため、ご自身の研究内容を一般人・素人レベルにも分かりやすく説明できることや、どの企業が同様の研究に取り組んでいるのかを転職エージェントへ的確に伝えることが、ご経歴に合う研究者案件を探すための重要なポイントになります。


・研究職以外の可能性


では、研究職以外だったらどんな仕事ができるとお考えでしょうか?「正社員として安定して働けるのなら何でも良いです。」とか「アカデミア研究をバックグラウンドに持つ者にとって、応募できる企業・職種は何がありますか?」と、新卒の就活と同じようなレベル感でご自身のキャリア・人生を転職エージェントに丸投げされるアカデミア研究者も多くいます。


転職エージェントとしてのコンサルティング力や案件の提案力が試されるのですが、正直アカデミアの世界で基礎研究に従事されてこられた方で30代の年齢にもなると案件の数・幅は限られてきます。しかし、だからといって悲観的になる必要はありません。


実際には、ヘルスケア・ライフサイエンスの中で研究に従事されてこられた方にとって、研究経歴にもよりますが、製薬会社、医療機器メーカー、診断薬や検査機器メーカー、CRO・サービスプロバイダー、その他にもヘルステックやオープンイノベーション系、稀ですがベンチャーキャピタリストや証券アナリストなどの金融業界まで、未経験でも応募可能な求人案件は様々あります。

・履歴書・職務経歴書の作成


履歴書の顔写真は、受け手に好印象を与えるビジネスライクに撮影されたものでしょうか?スマートフォンのカメラで自撮りされたものは、背景に影が入っていたり、無精ひげや顔色が悪かったり、髪型・服装に乱れがあったり、企業側からすれば、顔写真一枚だけで候補者の仕事に対する姿勢や性格が読み取れてしまいます。


職務経歴書についても英文レジュメと同様、面接官から見て一目で見やすく、分かりやすく、伝わりやすいですか?研究者のレジュメを拝見すると、10ページ以上の論文のような長文記載のものや、候補者の独りよがりな主観的コメントや自画自賛的な表現などが様々見受けられますが、面接官の立場からすればご自身の経歴を企業目線でまとめられない、文章作成能力に乏しいなどネガティブな印象を受け取るリスクがあります。


読み手の観点から、職務経歴書は候補者のこれまでの経歴や実績を客観的な表現で2~3ページ以内(論文リスト除く)にまとめて頂くのが適切です。


・日本国内における英語コミュニケーションスキルの重要性


研究職であろうとなかろうと、昨今ヘルスケア・ライフサイエンス業界では、日系企業・外資系企業問わず、英語でのコミュニケーション(読み・書き・聞く・話す)も基本的なスキルとして求められます。しかしながら、国内の多くの人材は論文を読む程度の英語力はありますが、会話力に乏しいため、高い英語力は強みとしてアピールできるポイントになります。目安としてTOEICスコア850点以上が欲しいところです。「いくら英語が出来ても、仕事が出来ないようじゃ……」という屁理屈を耳にしますが、英語が出来なければ永遠にその仕事は回ってきません


実際に、日本国内でポスドク研究や留学している外国人研究者は日本語が話せるだけでなく、基本的に英語も話せるので、国内の就活においても優位だったりします。面接の場で英語でのプレゼンテーションを求められたり、海外との電話面接の機会も増えてきました。企業が求める優秀な人材は、基本的に英語でのコミュニケーションが可能であることを認識し、早急に英語スキルの向上に取り組んで頂きたいです。


(3)転職エージェントの上手な活用方法


転職エージェントを上手に活用することが出来れば、様々なメリットが得られます。例えば、ご経歴に合わせて可能性のある案件をまとめて探すことができ、書類選考を通過させるための職務経歴書の添削や、事前の面接対策アドバイス、内定後の入社日や年収待遇の交渉などのサポートです。さらには、担当コンサルタントが応募企業側の採用責任者や社長などエグゼクティブらとの信頼関係を構築できていれば、書類選考に優位に働いたり、会社HPからは見えない企業の強み・魅力、内部情報を持っていたりします。


しかしながら、世間には転職エージェントが数多く存在しますが、実際には転職エージェントの規模や、コンサルタント個人のスキルや業界に精通した専門知識を持っているのか等、ピンからキリまでの差があり、候補者へ提供されるサービスクオリティにも差が出ます。候補者にとっては、企業から内定を獲得するためにもどの転職エージェントを利用すべきなのか、担当コンサルタントを含めた見極めが重要になります。


さいごに


今回の投稿だけでは、研究者としてのキャリア構築やセカンドキャリア、転職アドバイスなど、全てを網羅することは難しく、基本的なポイントのみをまとめました。


企業側から見て、実際に候補者が本当に価値ある人材なのかどうかは、書類選考や面接の場だけで判断することは難しく、入社後にしか分かりません。つまり、企業の採用側の観点から自分こそが最適な人材であるというエビデンス・判断根拠を示し伝えることができ、採用担当者を納得させることができれば、企業側へのキャリアシフトとなる内定につながるチャンスが見えてきます。


もし、現在の仕事や将来のキャリア構築についてご相談・ご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。


著者略歴

大谷晃太郎

RGF Executive Search Japan

Associate Director, Pharmaceutical Healthcare, Life Science & Diagnostics

RGFエグゼクティブサーチジャパンにて、主に製薬業界の中で、研究開発やメディカルアフェアーズ、安全性、薬事等の分野を担当。バイリンガル人材を中心に、将来を担う若手エグゼクティブから年収5,000万円以上の報酬を貰うハイクラスまで、幅広い層の候補者のキャリア構築をサポート。

kotaro.otani [at] rgf-executive.com



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