UJA学術 赤木 紀之
UJAは、多くの日本人研究者のみなさんに海外留学に興味を持ってもらうために、海外留学経験のある研究者のみなさんに、それぞれの視点から実体験に基づく留学の苦労や楽しさなどを話してもらう「留学のすゝめ」を2013年より毎年分子生物学会年会で開催しています。
昨年末の第42回日本分子生物学会年会にて開催した「留学のすゝめ2019」では、星居孝之さん(千葉大学)と松本有樹修さん(九州大学)が世話人と座長を務め、8名のみなさんに海外留学の経験を話してもらいました。
セッション後には、レストランにて、立食形式のUJA交流会を開催しました。7名の学生さんを含む合計35名のみなさんに参加してもらい、様々な情報交換、異分野交流が実現し、非常に活気に溢れた会となりました。
講演者からみなさんへのメッセージ:
中嶋舞さん(マサチューセッツ工科大学):留学には「覚悟」や日本のPIや家族からの「助け」が絶対に必要ですが、キャリアの中心となる仕事を成し遂げることを目標に頑張れば、必ず人生の中で忘れられない貴重な経験となる。
藤田諒さん(マギル大学):学位取得後から、数年後の留学を見据えて、資金、英語、パートナーなどの準備をした。準備はとにかく早めに。可能性をいくつも持っておくこと。留学先(住む街(国))を決める上で、「研究者コミュニティがあるか?」、「生活費や家賃はいくらか?」、「治安はどうか?」、「自分と家族が、ラボの外で生活が楽しめそうか?」などを調査しておくことが大事です。
勝村早恵さん(テキサス大学):研究室選びには、メリットとデメリットが色々ある。経験したデメリットの例として、「PIが日本人の研究室は、日本人が集まりやすく、英語を話す機会が少ない」、「Start-up Labでは、準備期間が長く、実験を始めるまで時間がかかる」、「テキサスは、乾燥して暑く、治安の不安がある」などが挙げられる。このようなデメリットをメリットに転換することが、留学生活では大事です。
松本有樹修さん(九州大学):どうやって留学先を決めるかはまずは「研究の方向性」を決める。大学院時代とは少し変化がある方が評価されやすいように感じた。実験技術を生かしつつ他分野への変更がよいかもしれない。「良い論文を出したい」のであれば、毎年トップジャーナルに複数論文を出しているラボがよい。帰国先は真面目に頑張っていれば、心配はない。留学先でよい論文を出したら、自ら売り込みをした方がよい。
星居孝之さん(千葉大学):海外留学の可能性は「無限」だが、期間は「有限」である。留学先から帰国を探している際には、「すすむ」より「やめる」勇気を持つ。メンターとの出会いを大切に。メンターから戴いた言葉で「Takaのようなポスドクを紹介してくれ」と言われたのは、最高の誉め言葉だった。
伊藤博さん(マックスプランク脳科学研究所):他の国に行くときは、言語、文化、環境など誰もが最初は不安。会話と研究能力は別物。研究に対する真摯な姿勢を示す必要がある。ポジションの獲得は、何よりも「人とのつながり」。人脈形成は極めて重要性。海外に出ることで、多様な考え方があることを知り、自己を知り、能力を伸ばせる。多国籍研究者と繋がることができ、異なる考え方・学術背景を知ることができる。自分の研究の面白さを伝えたり、意義を見直す機会が多くなる。
佐々木敦朗さん(シンシナティ―大学):ポスドクを10年経験して、PIに就任した。この間、100ほどのアプライをして、ようやくいくつかのよい返事をもらった。自分のネットワークを鳥瞰すると、皆若くして国際的なPIとして活躍している。これまで思わぬトラブルにあうものの、ご縁を大切にして今まで歩んだ。似たような職位でも大学間で給料に幅があり、さらに医師資格の有無により変動する。
足立剛也さん(国際HFSP機構):国内でのグラントのみなら、HFSPを始めとする国際グラントを、聴衆のみなさんの意見をリアルタイムで収集し共有する聴衆参加型の形式で、紹介してもらいました。
協賛:株式会社トミー精工、メルク株式会社
協力:国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
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