「Japan XR Science Forum 2020 in US Midwest」開催報告

UJA戦略推進室 北原 秀治


2020年7月11日に、研究者と家族が参加する学術系集会として世界で初めて仮想空間(VR)を用いた「Japan XR Science Forum 2020 in US Midwest」を開催しました。在米と在日の日本人研究者による研究発表、異分野間の共同研究に向けた交流、各種アワードのアバターによる贈呈式、留学にまつわる情報提供、親子科学教室などが繰り広げられ、日米だけではなく、ヨーロッパやアジアなど世界13か国から、400家族を含む1000人を超える人たちが参加しました。



今回のフォーラムの起源をさかのぼると、2016年11月に米国ハーバード大学で始まった、在米日本人研究者が年々減少し、日本の科学技術の存在感が世界で年々低下する中、逆風に負けずに世界に日本の科学技術のすばらしさを伝えようと、様々な垣根を超えて日本人研究者が集まり、在外公館、日本学術振興会、科学技術振興機構などの日本の行政機関を巻き込みながら今日まで発展してきた、The Japan-US Science Forumに行き着きます。通常は「The Japan-US (X) Science Forum」と(X)のところに国・地域名が入るのですが、今回は仮想空間(VR)と現実を掛け合わせて(XR:クロスリアリティ)とした今回の学会は、コロナ禍以前に行われていた学術集会を、仮想現実の世界で再構築する挑戦でした。会場を複数に分け、ポスター発表、企業展示、書籍販売、ランチョンセミナーを開催する通常の学術集会を運営するのも非常に大変なのですが、これを1つのVRの世界で実現するのは途方もないアイデアで、研究者だけでは達成できません。そこで、「コミックVケット」というVR上で同人誌販売を行っているリアルとバーチャルをつなげる会社「VR法人HIKKY」と手を組み、開催することができました。



当日は、岡田健一在シカゴ日本国総領事による3Dアバターを使用した開会の挨拶から始まり、閉会式では、ノーベル生理学・医学賞受賞者である大隅良典氏とTorsten Wiesel氏によるビデオメッセージが上映されました。


大隅氏からは「現在、コロナウィルスの問題で世界中が内向きになっているが、若い人たちにはどんどん海外に出て、直に異文化に触れて欲しい。一度しかない人生、チャレンジしてみようという精神が重要である。」と熱いメッセージをいただきました。



来場者からは、

  • 「世界中から同じ空間に集まることができ、存在感と臨場感を同時に味わえた。」

  • 「アバター同士のコミュニケーションがとても新鮮で、普段はとても気軽に話しかけることのできない方にも思い切って挨拶できた。」

  • 「様々な空間を行ったり来たりすることができ、新しい時代の学会の形を感じることができた。特にアバターを介した実況中継・副音声解説が斬新だった。」

などの声が聞かれ、クロスリアリティが実現したフォーラムでした。



今回はVRChat、Mozilla Hubs、Zoom、YouTube Liveという4つのツール(後述)を組み合わせることで、世界のどこにいても、どのような端末からも学会に参加し楽しめる設計がなされ、大会運営は東京、米国、ヨーロッパなど世界の複数地点を拠点として実施しました。また、VR空間内でアバターによる参加者同士の交流も行われ、コロナ禍でもアカデミアの交流が可能であることを証明できました。現在開かれている学術集会は、Zoomなどを用いたウェブ参加型、または講演の録画配信といったオンデマンド型のものが主流なのですが、参加者間の交流が難しかったり、臨場感や存在感が乏しく、物足りないと感じている研究者が多いはずである。一方、VRとなると仕組みが煩雑で操作が難しいのでは?と感じる方がいる上、端末によっては対応していないものもあるということなので、今回はVRChat(本格的なVRでWindows専用のツール)、Mozilla Hubs(Windows及びMacで使用可能、VR専用ヘッドセットがなくてもPCやスマホから二次元で参加可能なツール)、Zoom(通常のテレカンファレンス)、YouTube Live(VRメイン会場を3Dアバターを使って生中継配信)と4つのツールを使い、誰でもどの端末からでも自由に選んで参加できるように整備しました。本フォーラムはとにかく「仮想空間で現実」を徹底的に追求しており、本当に学術集会に参加した様な感覚を持てることに重きを置いた結果、参加後のアンケートでは80%以上の人に「とても満足」もしくは「やや満足であった」と回答していただけました。


研究者留学支援イニシアチブ(Cheiron-GIFTS)の助成金授与式では、文部科学省トビタテ!留学JAPANの西川朋子氏がプレゼンターとして採択者にトロフィーを授与しました。フォーラム内で開かれた「細胞 X 最新研究」「免疫・アレルギー X 皮膚」「異分野交流 X 留学後のキャリア」「異分野融合 X HFSP」「留学のすゝめ X Japan XR Science Forum」の優秀プレゼンターも表彰されました。賞の贈呈式は、もちろん、賞を渡す人も貰う人もアバターで、現実同様に壇上で行われ、その様子はYouTubeで生配信されました。最後は会場でアバターによる懇親会が行われ、盛況のうちに幕を閉じました。この仕組みをさらに進化させると、学会に限らずいろいろな分野に応用できます。本当のボーダレスな時代の幕開けを実感したフォーラムでした。