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イェール大学で新しく立ち上げた生命科学系の日本人研究者コミュニティ—Y-JLS—

イェール大学医学部免疫生物学科 亀田 和明(かめだ かずあき)

UJA総会をきっかけにイェールでの日本人研究者コミュニティを立ち上げた亀田さんからのご寄稿です。"まずは自分たち"を対象に、そして"自分たちがいなくなっても継続する"ことを目標とするなど、良いコミュニティ形成のヒントが満載です。(UJA編集部 鈴木 美有紀)

はじめに

イェール大学はコネチカット州ニューヘイブンにあります。大学は街の中心部を大きく占めており、街の中に大学があるのか、大学の中に街があるのか分からない感じです。同じアメリカ東海岸の中でもニューヨークやボストンといった大都市とは異なりこぢんまりとした街で他の大学・研究施設とはやや距離があるため、イェールのみで比較的独立したクラスターが形成されています。


外国人ポスドクは圧倒的に医学部が多いですが、法学部は歴代大統領を何人も輩出しており、アイビーリーグの中で唯一音楽や演劇学部も有するなど非常に幅広い分野で高いレベルの教育・研究を行っています。ただ、分野が多岐にわたっているためか逆に日本人コミュニティは分散していて、研究に関して定期的に密なコミュニケーションを取るという集まりはありませんでした。


本稿では、私たちが新しく立ち上げた生命科学系の日本人研究者コミュニティ"Yale Japanese Life Science Forum (Y-JLS)"について紹介させていただきます。

 


Y-JLS発足の経緯


イェールでは元々イェール大学日本関係者の会というFacebookグループがあり100人以上(既にイェールを去った人も含めると300人以上)が参加しています。ただ分野やキャリアステージが多岐にわたっており(学部生からFacultyまで)、時々の学生を中心とした交流イベントが主で、研究に関して熱く議論を交わすという集まりではありません。それ以外には私の周囲では医学部のNeurologyでAssistant professorをしている住田智一さんを中心に年に2−3回不定期で集まることがあるぐらいでした。


 

そのような中で、東海大学の中川草さんに2023年11月にボストンで開催されたUJA総会へ誘っていただきました。自分自身はUJAのサポーターにはなっていましたが活動に関わったことはなかったので1人で参加することが少しためらわれ、同じくイェールでポスドクとして研究をしていて論文賞グループに入っている推名健太郎さんと2人で 総会へ参加しました。


総会ではちょうどコミュニティ運営に関するシンポジウムがあり、私と推名さんはイェールでも自分たちの新しいコミュニティを立ち上げてみたい!と熱気に駆られました。シンポジウム終了後には慶應大学の早野元嗣さんやシンシナティ大学の佐々木敦朗さんにも声をかけていただき、いよいよ後戻りできないような雰囲気(?)の中で新しいコミュニティを立ち上げますと宣言しました。

 


ニューヘイブンへ戻ってから、住田さん(Neurology)とUJAの論文賞グループに所属している佐藤和貴さん(Cell biology)に声をかけて、推名さん(Neurosurgery)、私(Immunobiology)の4人で新しいコミュニティを立ち上げることにしました。UJA総会が終わってから大学近くのカフェで4人での最初の話し合いを行うまでは1週間も経っていなかったと記憶しています。


そして12月には第1回の会合を無事に忘年会という形で開催し24人に参加いただきました。ほとんどは生命科学系でしたが、化学や物理を専門とする方にも参加いただきました。飲み会と自己紹介を兼ねた忘年会は新しいコミュニティの始まりとしては最良のタイミングだったように思います。

 

コミュニティ立ち上げ後、初めてのセミナーの様子

コミュニティを立ち上げるにあたって、何を目的に誰を対象としてどのような活動をしていくのか、ということをまず考えました。我々は「イェールで研究するメンバーの親睦を深めながら、研究生活を充実させる」ことをコミュニティの目的としました。


その上で誰を対象とするか、となった時に、まずは「自分たち」であろうと考えました。少なくとも幹事たち自身が続けていきたいと思えない限りはコミュニティの存続は困難です。そしてその方向性に賛同していただける人たちに加わってもらいながらコミュニティを形作っていくのが良いと考えました。どの研究分野を対象とするかという時に、まずは深く議論できて自分たちの勉強になるという観点から生命科学系を中心とすることにしました。



 

Y-JLSFの活動


まだ2回しか集まりを開催していないので、活動と言えるほどのものはありませんが、まずは3ヶ月に1回程度の会合を開催していく予定です。創立メンバーの44人が共同幹事という形で、順番に会を担当します。参加者は22回とも20人超でコミュニティの出だしとしては上々だと感じています。


週末は家族の時間を優先したいという幹事たちの考えから開催日は平日の夜を選択しています。大学の会議室を借りて、食事や飲み物を幹事たちで準備し、食べながらリラックスして話を聞くという形で費用は会費制にしています。テーマは当番幹事の裁量で自由としていますが、まずはイェールでの研究がしっかりまとまってきた方にどのような仕事をしてきたかを発表いただくところから始めています。時間制限を設けずにとても活発な議論を行えています。

 


また3ヶ月に1回だと交流や情報交換としては頻度が少ないのでFacebookグループやDiscordのサーバーを併用して、現在は35人に登録いただいています。ここでは具体的な実験プロトコール、試薬、実験機器、時には研究以外の生活についても相談をすることができ、皆さんに活用いただいています。私自身も、自分の行いたい実験はどこのcore facilityが利用可能かなどをこれらのweb上で教えてもらいました。

 

 

活動を通して得られたこと


まずは不定期ではなく、定期的に集まるという意識を持つことでみんなの交流が深まり連携が取りやすくなっているように思います。そしてイェールにはどのような研究者がいてどのようなことをしているのか、ということを把握すればweb上の交流も行いやすくなります。


会で新しいネットワークを築けたり知識を得たりしたという報告を参加者からいただいています。コミュニティが存在することで、新しくイェールに来た日本人を誘ってネットワークを広げやすくなったという点も良かったです。

 


私自身はイェールで新しいコミュニティ立ち上げに関わったことをきっかけに、UJAのコミュニティ連絡部に誘っていただき新しい人たちとも知り合うきっかけになりました。この記事もその延長で書かせていただいています。コミュニティは運営側、参加者の全員が何か得られるものがあることが理想だと思います。

 


今後の展望


まずは定期開催を確立すること、そして一部の幹事が入れ替わった後でも会を継続できるようにすることが目標です。どの分野の研究者を対象とするかはコミュニティによって考え方が違いますが、私たちはまずは自分たちに近い分野を中心とすることで会の存在を確立していこうと考えています。


その上で、他の分野の研究者にもまずは講演に招待するなどのところから始めて徐々に輪を広げていきたいです。コネチカット州には他にもコネチカット大学(UConn)があり個人的には知り合いも何人かいるので、将来的には大学の垣根を越えた交流につなげていきたいです。会の名前などは実体に合わせて変更していけば良いと思っています。ということでY-JLSに興味のある方は是非ご参加ください!

 


謝辞


この度は、貴重な執筆の機会をいただきましたUJAコミュニティ連絡部の土肥栄祐さん、UJA総会時にコミュニティ立ち上げを後押ししてくださった早野元嗣さん、佐々木敦朗さん、コミュニティ運営について助言をいただいたUC-Tomorrow松山聡子さん、一緒にY-JLSの運営に関わっていただいている住田智一さん、佐藤和貴さん、推名健太郎さん、そして講演者やセミナー参加者の皆様にこの場を借りて感謝申し上げます。



著者略歴

亀田 和明(かめだ かずあき) 2009年京都大学医学部医学科卒業。2022年自治医科大学大学院医学研究科博士課程修了。同年より上原記念生命科学財団リサーチフェローシップを得てイェール大学医学部免疫生物学科ポスドク。2023年より日本学術振興会海外特別研究員。2023年にY-JLSを共同設立。 連絡先:kamedakazuaki [at] gmail.com

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