DAMPsの役割を追って:細胞外に遊離した核酸UDPはP2Y6受容体を介してアレルギー喘息を抑制する

Nagai et al., Journal of Clinical Investigation, 2019, Oct 22, PMID: 31638598


ハーバード大学

永井 潤


脂質や核酸などは、細胞がストレスを受けると細胞外へ放出され、ダメージ関連分子パターン(Damage associated molecular patterns;DAMPs)として、様々な生理活性に関わっています。DNA→mRNAを経て産生されるタンパク質は、発現してから遊離するまでにおよそ2—3時間程度かかりますが、こうしたDAMPsは、オンデマンドに速やかにメディエーターとして働くことができるため、遺伝子発現では間に合わない重要な生理現象にきっと関わっているのではないかと興味をもって研究してきました。


脂質の中でも、細胞外に遊離したシステイニルロイコトリエン(CysLTs)は、アレルギー喘息の原因分子として同定されており、実際にシステイニルロイコトリエン受容体(CysLT1R)拮抗薬は喘息の治療薬として現在使用されています。しかしながら、このCysLT1R拮抗薬には、約4人のうち1〜3人の患者でNon-Responderが報告されており、非常に個人差が高い薬でもあります。我々は、CysLT1Rのタンパク質の相同性の高い受容体に着目し、このロイコトリエン受容体拮抗薬は、同じDAMPsとしての核酸UDPの受容体P2Y6受容体をoff-target(本来の標的とは異なる別の分子)として阻害していることを見出していました。


そこで、私はP2Y6受容体欠損マウスを解析したところ、アレルギー喘息が悪化したため、このシグナルはアレルギーに対して保護的に働いていることが示唆されました。アレルギー喘息は、感作(Sensitization)相と惹起(Challenge)相より構成されていますが、P2Y6受容体は特に感作相において、アレルギーを内在的に抑制していることを、タモキシフェン誘導型のP2Y6コンディショナルノックアウトマウスのタモキシンの投与時期をずらすことにより明らかにしました。さらに、細胞特異的P2Y6欠損マウス、骨髄および細胞移植実験、抗体投与による細胞欠失、阻害剤を用いた薬理学実験から、肺胞マクロファージのP2Y6が責任細胞であることを同定しました。そのメカニズムとしてUDP- P2Y6シグナリングがTh1サイトカイン/ケモカインの遊離を促進して、保護的なNK細胞活性化(IFNγ産生)を誘発することを見出しました。すなわち、現在のロイコトリエン受容体拮抗薬は、内在的に保護作用のあるP2Y6までもOff-targetとして抑制してしまっているため、より特異的ロイコトリエン受容体拮抗薬の開発の必要性あるいはP2Y6アゴニストとの併用の可能性を提案しています。


一方、核酸や脂質は、低分子かつ分解されやすいため、特異的抗体を作成することが困難で、簡単に定量することが難しいのですが、この論文の中で受容体活性依存性のバイオアッセイ系を構築して、実際にアレルギーの感作時にマウスの気管支肺胞洗浄液(BAL)中で遊離するUDPの定量に成功しました。現在は、この定量系を改良して、UDPのみならず他の核酸や脂質を定量できる系を確立し、アレルギー患者の臨床サンプルを解析中です。核酸UDPの研究や定量に興味のお持ちの方は、ぜひご一報いただければ嬉しく、共同研究などを通じて、より研究を発展させていければ幸いです。


最後に、メンターのJoshua Boyce, MD(Chief, Division of Allergy and Clinical Immunology, Brigham and Women's Hospital/ Harvard Medical School)およびラボ・共同研究者、友人たちに心から感謝いたします。


著者略歴:永井 潤。Division of Allergy and clinical Immunology, Brigham and Women’s Hospital, Department of Medicine, Harvard Medical School。連絡先:junagai0805@gmail.com