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UJA留学のすゝめ2024 x 第47回日本分子生物学会年会 「日本の科学技術を推進するネットワークの構築」開催報告

鶴嶋真紅(UJAプロジェクトマネージャー/福岡工業大学大学院)

中嶋舞(大阪大学)

 赤木紀之(UJA学術企画/UJA理事/福岡工業大学)

DOI:10.34536/finding_our_way_012


海外日本人研究者ネットワークUJAでは、さまざまな学会開催に合わせて、大学院生や若手研究者向けに留学促進イベントである「留学のすゝめ」を開催しています。2024年11月27日に福岡国際会議場で開催された第47回日本分子生物学会年会にて、フォーラム「UJA留学のすゝめ2024 -日本の科学技術を推進するネットワークの構築-」を開催いたしました。

フォーラムは19:15-20:30の時間帯で開催され、会場には50名近くの皆様にお集まりいただきました。オーガナイザーは、UJA理事の赤木紀之(福岡工業大学)、中嶋舞(大阪大学)が務め、初めに本フォーラムの趣旨を述べました。その後、UJAプロジェクトマネージャーの鶴嶋真紅より、UJAの活動について紹介がありました。

 

長崎国際大学の江島弘晃さんより「留学先でサッカーをしていると...」というタイトルで講演が行われました。元々棒高跳びの選手であり、骨格筋の研究をされていた江島先生は、アメリカのユタ大学への研究留学を経験されました。英語が得意ではなかったものの、スポーツを通じて現地の人々と親交を深められ、予期せぬ骨折をきっかけに新たな研究テーマを見出しました。「身体活動」と骨格筋の研究から怪我の研究へと発展させるなど留学がきっかけで新たな研究テーマを見出され、かつ、留学においては、「言語力より人への思いやりが大切」というメッセージを参加者に伝えてくださいました。

 

静岡社会健康医学大学院大学の田中仁啓さんからは、「米国留学を通じて夫婦ともにキャリアチェンジ」という題目でご講演いただきました。学部生時代から熱心に英語学習をされており、カナダのMcGill大学への短期留学を経験されました。博士課程では臨床と研究の両立に苦心しながらも、カルテデータを活用して5本の論文を執筆。その後、「疫学」を学ぶためにノースウェスタン大学でポスドクを経験し、現在の職に至りました。ご夫妻でのアメリカ生活では、J1ビザと労働許可証(EAD)を活用し、奥様はすし職人として活躍。帰国後は英語力を活かした新たなキャリアへと転身されるなど、留学がもたらす予期せぬ人生の広がりを示す貴重なお話となりました。


鳥取大学の石井孝佳さんは「石橋を叩いても渡らない人生は嫌だ。まずはやってみる、それから考える」というタイトルで講演されました。修士課程修了時の内定を辞退し、「人生は1度しかない」という信念のもと留学を決意。ビル&メリンダ・ゲイツ財団のプロジェクトに採択され、ドイツのライプニッツ植物遺伝学および作物学研究所(IPK)で研究を展開されました。漫画ドラゴンボールに出てくる「精神と時の部屋」のように、場所を変えることで研究の質と時間が向上し、新しい環境に自らを置くことで成長速度が加速することを実体験としてお話いただきました。現在は世界各国の研究者とグローバルな共同研究を展開しており、科学者は世界中の研究者と協力関係を築ける職業であることを強調されました。研究者としてのキャリアパスの可能性と挑戦することの重要性について再認識する機会となりました。

 

北海道大学の渡邉友浩さんは、「異分野融合を目指して〜ドイツで新たな研究分野に挑戦〜」というタイトルでご講演いただきました。ポスドク留学のためのフンボルト財団の奨学金の獲得について、「論文」の出版実績の重要性をお話いただきました。留学先では、機能未知遺伝子の研究に挑み、非モデル微生物の研究を生化学へとスケールアップ。タンパク質のX線結晶構造解析などを通じて新しい水素化反応を発見するなど、大きな成果を上げられました。渡邉さんは、成功の秘訣として「パッション」の重要性を強調されました。情熱を注ぐことで自らを成長させ、新たな発見に繋げられるというメッセージをいただきました。

 

最後に、中外製薬株式会社の山下晃弘さんは、「学生の皆さん!最近円安ですし、カナダで外貨を貯蓄しながら博士号を取得するのはいかがですか?」という興味深いタイトルで講演されました。カナダ・ケベック州モントリオールでの博士課程の経験から、カナダでは博士課程の学生が研究者として認められ、ステータスに応じた最低限の給与が保証されること、副業が認められることを紹介されました。山下さんは副業でエキストラ活動を行い、映画出演というユニークな体験もされたそうです。博士課程には6~7年の長期在籍が必要で、最初の2年間と最後の口頭試験が特に大変だったものの、その試練を通じて得られた能力と経験は、キャリアの幅を広げる大きな糧になったと語られました。

 

すべての講演後、パネルディスカッション形式で会場からの質疑応答が行われました。講演者だけでなく、会場におられた留学経験者の先生からも具体的なアドバイスが寄せられ、会場全体で留学に関する率直な対話が展開されました。

フォーラム終了後には、本イベントへの多大なご支援をいただいた株式会社トミー精工様より、講演者の方々へ記念品として卓上遠心機が贈呈されました。企業様からの継続的なサポートは、このような学術交流の場を支える重要な基盤となっています。

 

翌日には懇親会を開催し、講演者の先生方、協賛企業の皆様に加え、留学に関心を持つ学生の方々も多数参加いただきました。事前申し込みの枠を超えて、飛び入りでの参加希望者も受け入れる柔軟な対応により、より多くの方々との交流の機会が生まれました。特に学生の参加者にとっては、第一線で活躍される研究者の方々と気軽に対話できる貴重な場となり、研究生活や留学に関する具体的な相談から、将来のキャリアパスまで、幅広い話題について深い議論が交わされました。



UJAは、このように留学に関心を持つ方々や研究者間のネットワーク構築を望む方々に向けて、様々な情報交換や学びの場を提供しています。今回のフォーラムを通じて、このような交流の場の重要性を改めて認識するとともに、今後さらにネットワークの輪を広げていく決意を新たにいたしました。このような活動を通じて、日本の科学技術の発展に貢献できるよう、引き続き尽力してまいります。



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