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【COVID-19クライシス#13】長井 遼(イタリア・パドヴァ大学)

更新日:2021年2月15日

執筆者:長井 遼 執筆日:2020年5月7日 国名:イタリア 所属:パドヴァ大学 トピック:海外生活

doi: 10.34536/covid19-014


イタリアの北部ヴェネト州にあるパドヴァ大学でポスドクをしています。素粒子宇宙理論研究室に所属し、宇宙に存在する暗黒物質の理論研究をしています。COVID−19の影響により、多くの方々が不自由を強いられていると思います。幸い、私の研究分野はテレワーク向きで、研究活動にそれほど大きな変化はありませんでしたが、生活環境は大きく変化しました。以下では、当時の私の状況や、私がCOVID-19パンデミックに対してどのような行動をとったかを書き綴りたいと思います。私の体験談が、少しでも何方かの参考になれば幸いです。 2019年11月に、妻と生後9ヶ月の息子を連れてパドヴァに引っ越してきました。最初は、言葉も通じない新たな生活環境に戸惑うこともたくさんありましたが、周りに助けてもらいながら、なんとか自分たちの生活基盤を整えていました。 ようやくパドヴァでの生活に慣れてきた頃、COVID-19に関するニュースが耳に入り始めてきました。次第に、自分の住む街の周りが封鎖し始め、いよいよ自分たちの住む街にも規制が及ぶまでの期間は本当にあっという間でした。”あっという間”に感じた一つの理由として、情報収拾が遅れてしまったことが大きかったと思います。イタリア語がわからない私たち家族にとって、COVID-19に関する情報はネット上にある情報が頼りでした。しかし、ネットだけでは自分たちが住む街のローカルな情報はわかりません。肝心な情報の多くは、テレビやラジオで報道されており、そこでの内容は知人から教えてもらっていました。話を聞いた時には、もうすでに自分たちの街にもCOVID-19 も猛威が及んでいました。今思うと、知人から情報を教えてもらっていなかったら、私たちは殆ど何も知ることができずに、不安な日々を過ごしていたと思います。 私たち家族は、2020年3月中旬に、日本に帰国することを決断しました。決断の決め手となったのも、やはり知人から得た情報で、当時の街の医療に関する深刻な事情でした。当時、私たちは、イタリア移住に関わる諸々の手続きが進行中だったのですが、幼い息子のことを思うと、緊急に帰国せざるを得ませんでした。今回の帰国は自分たちの判断ですので、職場からの補助もありません。家族全員分の移動費は大きな出費となりましたが、予断を許さない状況でした。 帰国を決断し、飛行機のチケットを手配してからの数日間は怒涛の日々でした。フライトまではわずか2日しかなく、その間、フライトがキャンセルされないか常に注意しながら、長期間の不在に備えて食材の整理や部屋の片付けなどを行う日々でした。移動当日、知人から“数時間後に首相の緊急会見がある”との情報を得て、空港(および空港までの移動手段)が封鎖されてしまうかもしれないと緊張しました。万が一のために、予定よりも大幅に早く空港に向かいました。結果的に、予定通りのフライトに乗れたのですが、最後の最後まで何が起こるかわからず、終始緊張状態が続きました。 日本に無事着いてからも気を許すことはできませんでした。まず到着後、空港内の検疫所でPCR検査を行い、検査結果を待ちます。幸い、家族全員陰性でしたが、長時間フライトの後の検査は体力的にもかなり大変でした。その後、空港から自宅への移動手段は、公共交通機関を避け、レンタカーを利用しました。結局、自宅に到着したのは、出国してから4日後となりました。 帰国後は、オンラインで上司と定期的にミーティングをし、互いの近況報告や、研究の議論を行なっています。冒頭で述べた通り、私の普段の研究活動は、もっぱら、人との議論、計算、論文を書くことなので、比較的テレワーク向きです。ただ、研究室で定期的に開催れていた文献紹介やセミナーに関しては、やや自粛傾向にあり、少なからず研究活動にも影響は及んでいます。(最近オンラインで行うようになってきましたが、探り探りな感じです。)また、イタリアにいた頃は、上司や同僚をコーヒーを飲みながら雑談したり、その会話の中から研究につながるアイデアがでてくることもありました。今ではそのようなカジュアルな会話ができません。些細なことですが、重要な機会が失われてしまったということを実感しています。 以上、稚拙な文章ですが、私の体験談を述べさせてもらいました。振り返ってみて、一番重要だったのは、人との繋がりだったと強く実感しています。終わりの見えない不安な日々が続いていますが、互いに協力し合い、なんとかこの危機を乗り越えましょう! Stay safe, stay healthy at home!


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