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【COVID-19クライシス #19】石原 純(アメリカ・シカゴ大学)

更新日:2021年2月15日

執筆者:石原 純

執筆日:2020年5月22日

国名:アメリカ

所属:シカゴ大学

トピック:研究室運営、雇用状況

doi: 10.34536/covid19-021


私の研究室はワクチンや免疫の薬を作っているため、現在はコロナの創薬研究のために研究室が開いていて継続して実験をしている。研究室内の半分以上がエッセンシャルワーカーとして、特別に研究室へのアクセスをもらっているが、25%以上の人が来ないようにgoogle calendar で何時に行くのか共有するシステムになっている。


個人的には冬にファカルティメンバーになるために就職活動を行った。就職活動へのコロナの影響は甚大で、多くの友人がオファーや面接が凍結になった。シカゴ大学を始め多くの大学が今後数年間のファカルティハイアリングを禁止した(自分で外部グラントを持っていて緊急の場合は除く)。シカゴ大学は220 million USD の損害をすでに受けており、5年スパンでの復興時間が必要とのこと。多くの人が今後2−3年ポスドクの時間が延びるかもしれない(その後熾烈なポジション争いを強いられる)。


私はラッキーで、イギリスのインペリアルカレッジロンドンからギリギリの時でオファーをもらった。インペリアルの方針は、面接に呼んだ今年までは受け付け、来年以降数年間はファカルティメンバーは誰も雇わない、とのこと(予算ベースのポスドクや学生は雇われる)。6月にシカゴ大学もインペリアルも研究室が少しずつ開くようだ。私はシカゴにいながら、夏にリモートで契約が開始する予定。実際に移動する日程は、いつ行けるのかわからない。


また私が人づてに聞いたところでは、アメリカやスイスに海外学振で留学しているポスドクには、別の問題も浮上する可能性がある。アメリカやスイスではポスドク雇用の基準(特に給料)が法で決まっており、日本(学振)からの給料だけではその基準に達していない。円安やデフレの影響で以前から問題になっていたことだが、つまり日本からの給料だと最低賃金以下になってしまう問題である。そのため、留学先側から足りない分をサポートしてもらっているケースが多い(サポートしないと人権問題に発展する可能性があるため)。今年、コロナウィルスの影響で、シカゴ大学では完全に外部資金でカバーできる人材以外は、新規で雇うことを禁止したそうだ。この措置により、海外学振による給料だけではシカゴ大学に来る道は難しくなる可能性が挙げられる。これは海外留学を目指す若手日本人研究者にとって、深刻な問題に発展するのではないだろうか。留学先とよく確認していただきたく思う。


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