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【COVID-19クライシス#27】佐藤 大輔(アメリカ・ノースカロライナ州立大学)


執筆日 :2021年8月29日

国 名 :アメリカ(2019年2月~2021年2月)

留学先 :ノースカロライナ州立大学(博士研究員)

トピック:研究室の運営について・海外での生活について・雇用状態について

DOI  : 10.34536/covid19-029


研究室の閉鎖

 私の所属する研究室が閉鎖したのは2020年3月20日からでした。大学は2月末頃から旅行の制限やリモートワークの推奨などの対策をとってきていましたが、新規感染者は増加の一途を辿ったのです。ここから約3ヶ月、私はリモートワークを余儀なくされました。私は有機合成化学系の研究室に所属しており、いわゆる実験研究者として働いていました。そのため、研究室以外では研究活動ができず、私の研究活動はストップしてしまいました。

 リモートワークを始めて約2週間の間は、実験データの整理や実験項の執筆などを行っていましたが、それが終わるといよいよやることがなくなってしまいました。さてこれから何をしようと考えていたところ、ボスからreview articleの執筆を打診されました。私自身review articleの執筆経験はなく、非常に良い機会だと考えてこの提案を快諾しました。フルタイムでreview article に取り組める私が主体となって、文献調査から構成、骨格となる文章の執筆を行いました。

 また、当時この研究室で働き始めて2年目だった私は、そろそろ次の職場を探そうと考えていました。そこで、この機会に就職活動用の資料作成および応募などをreview articleの執筆と並行して行いました。コロナ禍を理由にオンライン面接を採用する大学が増えたこともあって、海外から日本の大学への応募もしやすい環境となりつつありました。


研究活動の再開

 6月中旬から研究室での合成研究を再開できたものの、実験に必要な共用機器が依頼測定あるいは限られた人のみしか使用できず、実験が思うように進みませんでした。この頃、私の住むノースカロライナ州内は制限緩和措置がとられていました。その緩和措置が最終段階に入ったのは10月頃であり、その頃からまともに実験ができる環境が戻ってきました。しかし、依然として他大学や外部機関との共同研究はやりづらい部分がありました。実験が進みづらい分、私はreview articleの執筆や就職活動に時間をかけることができました。おそらく、日常的な実験と並行してそれらを行うとなると、かなり大変だっただろうと思います。次の職場が決まったのは11月中旬で、紆余曲折ありましたが2021年2月中旬に無事日本へ帰国できました。


生活の変化

 私の場合、リモートワーク期間中も雇用状態に変更はなく、給与も通常通り支給されていたため、幸いにも生活に困ることはありませんでした。ただ、ロックダウンに伴い近隣のレストランのほとんどが一時閉店してしまい、普段自炊をしない私はとても困ってしまいました。コロナ禍に加えて、いわゆるBlack Lives Matterや大統領選挙の影響で抗議デモ活動などが活発となり、普段以上に外出がしづらくなってしまいました。これをきっかけに、私は自宅で日本食を作るようになりました。研究室の学生と近場のアジアンマーケットに行って食材を調達し、毎食自炊をするようになりました。これは、コロナ禍でなければ身に付かなかった習慣だと思います。おかげで、ジャンクフードまみれの生活から脱することができたわけです(笑)。


まとめ

 コロナ禍によって、特に私のような実験研究者の研究環境には多くの変化があったと思います。しかし、一時的に実験研究から離れることは、決して悪いことだけではなかったと思います。その時間を利用して、普段は取り組みづらいreview articleの執筆を行ったり、就職活動を行ったりすることで、自分の研究内容や周辺知識を整理したり、今後のキャリアプランについて考えたりすることができました(review articleは無事アクセプトされました。内容についてご興味のある方は、是非ご覧ください。DOI: https://doi.org/10.3390/org2030013)。

 これを執筆している2021年8月現在も、新型コロナウイルスは世界中で猛威を振るい続けています。色々と不便な世の中にはなりましたが、自分の置かれている環境に適した生活様式および研究様式を模索し、実践することが大切であると私は思います。


筆者プロフィール

 2017年に九州工業大学大学院生命体工学科生命体工学専攻にて博士 (工学)を取得。同研究科産学官連携研究員を経て、2019年2月よりノースカロライナ州立大学化学科にて博士研究員として勤務。2021年4月より現在に至るまで、九州大学大学院薬学研究院にて学術研究員として研究に従事。メールアドレス < sato.daisuke618@m.kyushu-u.ac.jp >


ノースカロライナ州立大学化学科在籍時のボスであるDr. Jonathan S. Lindsey(左)との一枚。コロナ禍のため、マスク着用での撮影となった。



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