留学中常に頭をよぎる2つのこと

執筆者:

柏木 哲

留学先:

Vaccine & Immunotherapy Center, Massachusetts General Hospital, Harvard Medical School

実践的なものについては他の方々が書かれておられますので、私が思うポスドク中にやっておく?ことを2つ、挙げてみたいと思います。 1.常に、独立志向的発想 日本では大学院から助手(助教)、そのまま同じ研究室/講座内で上へ、というパスを辿っているケースも見受けられます。この場合、大きな教授が定年になるまでは関係が続きますし、そのコネクションや研究のリソースを頼り使い続けることになり、そのままの分野で素晴らしい業績を出し続けている一流研究者もたくさんおられるかと思います。ただ、周囲を見るに、独立志向の強い研究者の方がボトムアップ型の独創的な研究をしているケースも多いように思います。また、米国では、同じ研究室には特殊な事情がない限りキャリアの境目を越して残りませんので、若手研究者(ポスドク)の発想は概して数年後の独立に向いています。いずれのケースも、いい研究がその後できたかどうかはすぐには分かりませんので、キャリアの初期の研究者の場合潜在能力でしか物事を論じることはできませんが、私の経験上、少なくとも後々米国で「独立」研究室を持つことを許されたポスドクや大学院生には共通した特徴があると考えます。それは、「独立志向的なものの考え方」です。 〈私が感じる「独立志向の人」の典型的な発言〉 「私のいるラボでは、このようなことをやっており、ボスはその道でこんなことをやってきていた。わたしはそのようなラボで、このようなことをやっている」と、自分の研究が常に中心でそれを説明するときに目が輝いている。 「私は留学先がこういう特殊なリソースまたは技術を持っているので、それに惹かれて来た、それをもとにこのようなことをポスドクでやったら面白かったから将来はこのような研究を展開したいと思っている」と、常に未来志向。 〈私が考える「非独立志向の人」の典型的な発言〉 「私のボスはとても有名な人で、教科書にも乗るような人であり、そんな有名な人のところで実験をしている」とボスの活動が発想の中心。 「私のいるラボはすごいラボで、業績もたくさんあり、最近も同僚の誰それがNatureを出した」と、他人の活動が発想の中心で、過去志向。 「私はすごく有名なラボにおり、お金もあり、施設も一流で恵まれた環境にある」と、所属ラボが発想の中心。 発想が独立志向の人は独立の動機ももちろん強く、日頃ボスやラボの人を観察するときに視点も鋭く、独立に向けた準備期間を限られた時間で有効に活用していると感じていますので、発想の持ち方は重要だと感じております。 2.フェローシップにできるだけアプライする 研究の息が長い人に共通することは、「グラント書きがうまい」ということがあります。実際にポスドクが自分のために書く研究グラントの応募としてはフェローシップということになるかと思います。どんなフェローシップがあるか、データベースを使って日頃から自力で情報を集めて、かたやラボで実験をしながら、所定の書式に合わせて執筆を進めるのはとても骨が折れることだと思います。よくある話は、インタビューに行ったらフェローシップ獲得という条件を出された、また職探しやボスとの関係構築に有利だからアプライする、という動機ですが、それを少し変えて、このグラント書きが将来的に自分のグラントを書くいいトレーニングになるという発想、また獲得した人のキャリアにつながるという発想を持つと、さらによいように思います。 私は以前、ボストンに独立を目指して来ているPhD研究者にフェローシップ執筆、獲得の苦労話をしたところ、「サラリーがラボから十分もられているのに、なぜ実験の時間を削って苦労してでもそんなものを書かなければならないのか。それは実力不足で給与をもらえない人がやらなければならないことではないのか。」と真顔で言われたことがあります。 グラント書きはアイデア勝負ですので、論文書きとはまた異なった修練が必要と考えます。自分のアイデアを書く、プロジェクトの計画を練る、それを他の研究者が評価する、評価のコメントを見て考え直す、というグラントの作業にはコツがあり、それを習得しつつ上達するには、場数が多いほどよいと思います。独立したら自分で全部やらねばならないので、それに至るまでの間に、他の人たちにいろいろ自分のグラントを見てもらってアイデアや文章を評価してもらう絶好のチャンスと思います。 以上、簡単ではありますが、上記の2点は私が13年以上にわたって米国でいろいろな研究者を見てきて常に感じている点で、少しでも参考になれば幸いです。末筆になりますが、皆様の研究生活の成功をお祈りしております。

​編集者より

​執筆者紹介:

編集後記:

フェローシップは応募しなければ絶対に獲得出来ません。みなさんの興味のある研究をするためにぜひフェローシップへ応募してみてください。

編集者:

川上 聡経

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