執筆者:森岡 翔
執筆日:2020年5月23日
国名:アメリカ
所属:バージニア大学医学研究科
トピック:今、研究者ができるのは
doi: 10.34536/covid19-022
森岡研究室では細胞がなぜ死ぬのか、どのように死ぬのか、死んだ細胞が周囲にどのような影響を与えるのか、そして、これらの発見を病気の治癒に応用できないか、ということを研究しています。この度、COVID-19の研究への影響をシェアするということでお声がけをいただき、寄稿させていただくことになりました。
現在のアメリカにおける研究状況は、UJA編集部様がまとめられている記事の内容に一致します(https://www.uja-info.org/post/covid19-019)。バージニア大学でも3月中旬からCOVID-19対策が始まり、在宅勤務が推奨され、ソーシャルディスタンシングがしっかりと守られるように、google calendar で誰が、何時にラボに行くのかを共有するシステムが用いられています。
このような中で、時間が制約されてしまい、様々なシステムが停止するなど、COVID-19が研究界に与えている影響は非常に大きく、自身の将来やキャリアについて不安に思っている方々や、悩んでいる方々が多いと思います。私も、昨年に研究室を立ち上げたばかりであり、出鼻を挫かれた状況と言っても過言ではありません。では、急に在り方を変えざるを得なかった私が、この状況下でわれわれに何ができるのかを考えてみました。
○まずは、現在おこなっている研究の効率をある程度保つためにできることです。
・データをまとめる ・これまでの結果を見直してみる ・周辺論文を多く読む ・論文の草稿を書き始める ・総説を書く ・プロポーザルを書く ・これからの計画をさらに具体的にする
○また、物理的な制限があるために、どうしてもこれまでの効率を保ち続けるのが難しいと思います。そこで、以下のようなことに取り組んでみるのも良いと思います。
・完全に他領域の論文を読む ・色々な先生方と連絡を取ってみる ・ウェット研究者であれば、ドライ解析に挑戦する ・Nature Methodsなどを用いて、最近の技術を見直す
○さらには、マクロな視点から、
・自分が、どんな研究に興味を持っているのかをもう一度考えてみる ・次に行きたい場所や領域の情報を多く得る、コンタクトを取ってみる ・家族の時間を持つ ・単純に深く休む ・夢の研究テーマを幾つか考えてみる
第一優先としてきた事柄をストップせざるを得なくなってしまった今の状況は、多くの方にとって嬉しいものではありません。世界中で多くの人が困り、悩んでいると思います。しかし同時に、この時間が、遅くなってしまった不自由な時間というより、他の性質を持った “特殊な時間”であるのも事実です。
今の時間を、できうる限りで、“大きな意味を持った時間であった、転機であった”、と近い将来に捉えることができれば、非常に有意義な時間となるかもしれません。この苦しい状況の中、一日も早く元の生活が戻ってくることを祈りながら、少しでも多くのポジティブを心に抱き、このパンデミックを皆で乗り越えられたらと思っております。